「模倣曲」とは?すべあな界隈で作風をまねて作る曲のこと。種類・歴史・数字で見る広がり

模倣曲 用語解説

意味

ネットの音楽家「全てあなたの所為です。」(すべあな)の作風をまねて作った曲のこと。

すべあな界隈では、まねすることは悪口ではなく、ちゃんとした創作のジャンルです。黒い背景に白い文字、合成音声の歌、暗号入りの歌詞。この「型」にのっとって作られた曲が、模倣曲と呼ばれます。

学校なら「人の答えを写すな」と怒られるところ。この界隈では、上手に写すと拍手が起きます。

ひとことで言うと

たとえるなら、「ひとりの画家の画風を、何千人もがまねして描き、見せ合っている美術館」です。

  • 本家の曲は、2018年からの4年あまりで10曲ほど。それをまねた曲は、2025年5月時点で約4,000曲
  • 最初の模倣は2018年の後半に生まれ、2019年に「模倣」を名乗る曲が広がった
  • 「〇〇模倣」と、もとにした曲の名前で呼ぶ
  • 模倣曲をさらにまねる「模倣の模倣」もある
  • 年表、月報、歌詞サイトまで、記録をファンが自分たちで作っている
  • 「本家とまちがえさせない」「二次創作と明記する」が大事なお約束

つまり、本家への敬意を土台にした、巨大な「まねっこ創作」の文化です。

使い方

  • 「この曲、教育の模倣だね。アルペジオでわかった」
  • 「初めての模倣曲、デフォ子に歌わせてみた」
  • 「模倣の模倣の模倣まで来ると、もう元がわからない」

もとにした曲の名前をつけて「〇〇模倣」と呼ぶのが定番です。本家の曲「教育」をまねたら「教育模倣」、「K²」をまねたら「K²模倣」。曲を作る人のことも「模倣」と呼ぶので、「あの模倣の新曲」のように使います。

もとになる本家の曲

模倣の題材になる本家の曲は、YouTubeで公開されている、次のような曲です(公開日はYouTube、再生回数は2026年10月時点の目安)。

曲名公開日再生回数(目安)
.2018年9月13日約1,280万回
..2018年9月24日約480万回
教育2018年10月12日約130万回
アブジェ2018年11月30日約90万回
…2018年12月30日約130万回
表・裏2019年4月24日(同時公開)約67万回・約59万回
名の無い星が空に堕ちたら2019年9月28日約140万回
エヌ2020年6月28日約200万回
K²2022年11月11日約110万回

点の数で区別するタイトル、記号、短い漢字。曲名からして、もう暗号のようです。どの曲も、作風がそれぞれ少しずつ違うので、「どの曲をまねるか」で模倣曲の雰囲気も大きく変わります。

模倣の種類

ピクシブ百科事典では、模倣曲をこんなふうに分けています。

  • 定型模倣:本家の特定の1曲をまねる。いちばん多い
  • 複合模倣:本家のいくつもの曲の要素を組み合わせる
  • 模倣の模倣:模倣曲を、さらにまねる(四次創作とも)
  • オリジナル模倣:本家のどの曲もまねていないが、作風はすべあな
  • オリジナル模倣模倣:オリジナル模倣を、さらにまねる
  • ネタ曲:型を使って笑いをとる曲

ファンは「どの曲の、どの模倣の、さらにどの模倣か」まで聞き分けます。ソムリエも顔負けです。

成り立ちと広がり

2018年に本家が「..」などを公開したあと、その作風をまねる人が現れました。界隈の歴史をまとめたnoteの記事(2025年12月)では、「おそらく最古の模倣」として「信号」という曲が挙げられ、2018年の初期の模倣として「火種」「relix」の名前も紹介されています。

2019年に入ると、はっきり「模倣」を名乗る曲が広がります。このころは、本家の1曲をまねる定型模倣が中心で、「オリジナル模倣」という考え方はまだなかったとされています。2019〜2020年には、「全て只の模倣です。」「全て言の葉の所為です。」「全て事象の所為です。」「全てあなたの為です。」など、いまも名前が知られる模倣名義が次々に登場しました。

模倣曲を作る人のアカウント名は、「全て〇〇の所為です。」のように本家の名前を一部だけ変えたものが多いのも特徴です。名前からして、もう模倣です。

数字で見る模倣曲

界隈の出来事を記録している有志の「すべあな界隈年表」には、曲、アレンジ、メドレー、予告などが登録されています。登録件数を年ごとに見ると、界隈の広がりがよくわかります。

年年表の登録件数
2018年124件
2019年242件
2020年640件
2021年1,327件
2022年1,540件
2023年1,836件
2024年2,413件
2025年2,709件
2026年2,201件(10月時点)

合計は1万3,000件をこえています(模倣曲以外の動画もふくむ数です)。本家の新曲は2022年から出ていないのに、模倣の数は毎年増えつづけている。それが、この界隈のいちばん不思議で、いちばん熱いところです。

模倣曲の歌詞を集めた非公式サイト「全て歌詞の所為です。」では、登録された曲の番号が1万をこえました。

模倣曲の「型」

  • 映像:黒い背景に白い文字。ドット絵のものもある
  • 歌声:合成音声。とくに「デフォ子(唄音ウタ)」が定番
  • リズム:ドン、ドン、ドン、ドンと続く四つ打ち
  • すべあなアルペジオ:細かく速い音のフレーズ
  • 歌詞:意味がつかめそうで、つかめない
  • 暗号:モールス信号や鍵盤の位置などで、メッセージを隠す
  • 裏歌詞:メインの歌詞の裏で、別の歌詞が同時に流れる
  • タイトル文字:「教育」の題字をまねた「教育文字」

全部そろっていなくても大丈夫。どこを受けついで、どこを自分らしく変えるか。そのさじ加減に、作り手の個性が出ます。

模倣曲を支える界隈のしくみ

  • プレラ:模倣曲をつぎつぎにプレミア公開する投稿イベント。2020年夏から続く
  • 模倣月報:2024年1月号から始まった、模倣曲の再生数を毎月まとめる企画。動画版は毎月プレミア公開される
  • すべあな界隈年表:界隈の出来事を記録する、だれでも編集できる年表
  • 金枠・ダイヤ枠・ルビー枠:曲の再生数が1万・10万・100万回に届いたことを表す、界隈の勲章
  • Imitate Community(イミコミュ):2020年に生まれたファンの交流団体。Discordの参加者は800人をこえる

大事なお約束

  • 本家とまちがえさせない。「二次創作です」「本家とは無関係です」と明記する
  • 模倣は、本家が嫌だと言えば成り立たない。暗黙の了解の上で活動していると自覚する
  • お金がからむ使い方はしない
  • 作風が似ているだけで、他人の曲を「模倣でしょ」「あの人の別アカでしょ」と決めつけない
  • 身内ネタを、ほかの界隈に持ちこまない

イミコミュの利用上の注意でも、「本家から申請があれば関連する内容を削除する」「金銭がからむ二次利用は禁止」などが定められています。まねるからこそ、敬意はしっかり。これが模倣曲の世界のいちばんの決まりです。

模倣曲を作ってみたい人へ

  • まねる曲を1曲決める:まずは定型模倣から。好きな本家の曲を何度も聞く
  • 歌声を用意する:無料の歌声合成ソフトUTAUなら、デフォ子がすぐ使える
  • 曲を作る:パソコンの音楽制作ソフト(DAW)で、四つ打ちとアルペジオから
  • 映像を作る:黒い背景に白い文字。教育文字のタイトルを入れても
  • 説明欄を書く:「〇〇の模倣です」「本家とは無関係です」と明記する

最初の1曲は、うまくいかなくて当たり前。プレラに参加したり、仲間と合作したりするうちに、自分の作風が見つかっていく人も多いそうです。

まとめ

  • 模倣曲は、すべあなの作風をまねて作った曲。2025年5月時点で約4,000曲
  • 「〇〇模倣」と、もとの曲名で呼ぶ。定型模倣・複合模倣・オリジナル模倣など種類がある
  • 本家とまちがえさせない、二次創作と明記する、がお約束

すべあな界隈の文化そのものは「すべあな界隈」の記事にまとめています。

次に読む

出典

(この記事は2026年10月20日時点の情報です。再生回数・件数は目安です。)

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