1羽のペンギンが、仲間の群れからそっと離れる。
海とは反対の方向へ。遠くの、氷の山へ向かって、ひとりで歩いていく。うしろでは、重々しいオルガンが鳴りひびいている。
字幕は「月曜の朝の私」「全部投げ出したときの自分」。
……いや、ペンギンに何を背負わせてるの。
2026年のはじめに世界中で流行した、このちょっと切ない動画。もとは約20年前の、まじめなドキュメンタリー映画でした。
元ネタは、2007年のドキュメンタリー映画
映像のもとは、ドイツの映画監督ヴェルナー・ヘルツォークによるドキュメンタリー映画『Encounters at the End of the World』(2007年)。南極で暮らす人や生きものを追った作品です。
問題のシーンは、南極のペンギンの群れを撮った場面。
ほとんどのペンギンは、エサのある海へ向かいます。ところが1羽だけ、くるりと向きを変えて、何もない内陸の山へ向かって歩きはじめるのです。
その先に食べものはありません。待っているのは、ほぼ確実な死です。解説サイトによると、監督はこの場面に、人間が連れもどしても、ペンギンはまた山へ向かってしまう、という趣旨のナレーションをつけています。
なぜそんなことをするのか。解説サイトは、方向感覚を失ったり、病気になったりしたペンギンに見られる行動だ、という科学的な説明を紹介しています。哲学ではなく、迷子です。
何が面白いの?
ペンギンに、勝手に人生を重ねてしまう
科学的には、ただ迷っているだけ。
でも人間が見ると、どうしても意味を読みこんでしまいます。「群れに合わせるのをやめたんだな」「全部イヤになったんだな」「分かるよ……」。
ネットでは「ニヒリストペンギン」「ロンリーペンギン」という名前までつきました。ペンギン本人は、たぶん何も考えていません。
音楽が、おおげさすぎる
流行した動画には、ダンス曲をパイプオルガンふうに弾いた、やたら荘厳な音楽がついています。
よちよち歩くペンギンと、教会のような重たい音。この組み合わせで、悲しいのか笑っていいのか分からない、絶妙な空気になりました。
「疲れた」を、笑いながら言える
「仕事やめたい」「もう全部投げ出したい」と、そのまま書くと重くなります。
でも、山へ歩いていくペンギンの動画に「金曜の退勤後の私」と添えるだけなら、ちゃんと笑える。しんどさを、ペンギンに代わりに背負ってもらうわけです。
ダイヤモンド・オンラインの記事も、孤独や無力感をかかえながら、それを笑いに変えて受けとめる、いまのネットらしい感覚が共感を集めた、と分析しています。
なぜ、約20年たって流行った?
じつは、前から知る人ぞ知る映像だった
ダイヤモンド・オンラインによると、このシーンは2010年ごろから、一部のネットユーザーのあいだで知られていました。じわじわと語りつがれてきた映像です。
2026年1月、編集しなおした動画がTikTokで爆発
それが2026年のはじめ、あのオルガンの音楽をつけて編集しなおした動画がTikTokで広まり、一気に世界中へ。特定の事件やニュースがきっかけになったわけではない、という点も指摘されています。
流行はかなり大きく、アメリカのホワイトハウスの公式アカウントまで、このペンギンをネタにした画像を投稿したほどでした。
日本では「あとから知った」人が多い
このミームは海外が中心で、日本ではそれほど大きな話題になりませんでした。
そのぶん、あとからショート動画で流れてきて「このペンギン、何?」となる人が多いようです。2026年はググガガペンギンというまったく別のペンギンも流行したので、ごっちゃになっている人もいるかもしれません。山へ歩いていく、実写のほうがこちらです。
まとめ
- 元ネタは、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の2007年のドキュメンタリー映画の一場面。1羽のペンギンが群れを離れ、山へ向かって歩いていく
- 科学的には方向感覚を失ったり病気になったりしたペンギンの行動とされるが、ネットでは「全部投げ出した自分」に重ねて「ニヒリストペンギン」と呼ばれた
- 2026年1月、荘厳な音楽をつけた動画がTikTokで広まり、世界的に流行した
出典
最終更新日:2026年10月10日



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