「ヴィーガン」界隈とは?ベジタリアンとの違い・歴史・お作法・用語まで、“近代文化”として徹底解説

ヴィーガン界隈 界隈解説

※この記事は、ヴィーガンの方々への偏見をあおったり、からかったりする意図はまったくありません。「ヴィーガン」を、いまの社会に根づいた「近代文化」のひとつとしてとらえ、その成り立ちや作法、言葉、魅力を事実にもとづいて解説することを目的としています。

「このお菓子、ゼラチン入ってる……」

「お味噌汁のだし、かつお?昆布?」

「レザーっぽいけど、これヴィーガンレザーだから大丈夫」

スーパーで、レストランで、服屋さんで。ヴィーガンの人たちは、ふだんの暮らしの中でこんな「確認」をくり返しています。知らない人から見ると不思議に見えるかもしれません。でもその裏には、80年以上の歴史と、はっきりした考え方があります。今回は「ヴィーガン界隈」を、文化としてまるごと解説します。

ひとことで言うと

肉や魚だけでなく、卵、乳製品、はちみつなど、動物からとれるものをできる限り使わずに暮らす人たちと、その文化のこと。

食べ物だけでなく、革製品やウール、動物実験をした化粧品なども避ける人が多いのが特徴です。たとえるなら、「動物を使わない」というルールで、食事も服も日用品も選び直している人たちです。

  • 「ヴィーガン」は1944年にイギリスで生まれた言葉
  • ベジタリアン(菜食主義)の中でも、もっとも動物性のものを避けるスタイル
  • 理由は、動物への思いやり、環境、健康、宗教など人それぞれ
  • 日本でヴィーガン・ベジタリアンの人は、調査によって約5%前後
  • 肉を「減らす」フレキシタリアンまで含めると、関わる人はもっと多い
  • 日本の精進料理は、ある意味で「元祖プラントベース」

つまり、「何を食べないか」ではなく、「どんな世界を選びたいか」を毎日の買い物や食事で表現している文化なのです。

ヴィーガンとベジタリアンの違い

「ヴィーガン」と「ベジタリアン」は混同されがちですが、食べるものの範囲が違います。観光庁のガイド(2024年)をもとに整理すると、こうなります。

  • ヴィーガン:肉、魚介、卵、乳製品に加え、はちみつやゼラチンなど動物由来のものをすべて避ける。動物由来の衣類も身につけない
  • ラクト・オボ・ベジタリアン:肉と魚は食べないが、卵と乳製品は食べる
  • ラクト・ベジタリアン:乳製品は食べるが、肉・魚・卵は食べない
  • オボ・ベジタリアン:卵は食べるが、肉・魚・乳製品は食べない
  • ペスカタリアン:肉は食べないが、魚介や卵、乳製品は食べる
  • ポロタリアン:牛や豚などの赤身肉は食べないが、鶏肉は食べる
  • オリエンタル・ヴィーガン:ヴィーガンに加えて、ニンニク、ニラ、ネギ類などの「五葷(ごくん)」も食べない。仏教の考え方にもとづき、台湾に多い
  • フレキシタリアン:ふだんは植物性中心で、ときどき肉や魚も食べる、柔軟なスタイル

ヴィーガンは、この中でいちばん「動物性のものを避ける範囲が広い」スタイル。食事だけでなく、生き方全体に関わる考え方だという点が大きな特徴です。

どんな人たち?

ヴィーガンを選ぶ理由は、大きく分けると次のようなものがあります。

  • 動物のため(エシカル):動物を苦しめたり、利用したりすることに反対する。いちばん中心にある考え方
  • 環境のため:畜産が温室効果ガスや森林伐採に与える影響を減らしたい
  • 健康のため:植物中心の食事を取り入れたい
  • 宗教・文化:仏教の不殺生の考え方など

理由によって呼び方が分かれることもあります。動物の権利を理由に、食事だけでなく暮らし全体でヴィーガンを実践する人は「エシカル・ヴィーガン」、食事だけをヴィーガンにしている人は「ダイエタリー・ヴィーガン」や「プラントベース」と呼ばれることがあります。

ヨーロッパの調査では、ヴィーガン・ベジタリアンになる動機が、動物愛護から、環境や健康の管理へと広がりつつあるとも報告されています(ジェトロ、2021年)。

成り立ちと歴史

1847年:イギリスでベジタリアン協会が誕生

近代のベジタリアン運動は、19世紀のイギリスで本格的に始まりました。1847年にイギリス・ベジタリアン協会が発足し、「ベジタリアン」という言葉が広まります。ラテン語の「vegetus(健全な、元気な)」が語源とされます。

1944年:「ヴィーガン」という言葉が生まれる

1944年11月、乳製品も口にしないベジタリアンだったドナルド・ワトソンら6人が集まり、イギリスで「ヴィーガン協会(The Vegan Society)」を立ち上げました。「ヴィーガン(vegan)」という言葉は、ワトソンが「vegetarian(ベジタリアン)」の最初と最後の文字を組み合わせて作ったもの。ワトソン自身は「ベジタリアンの始まりであり、終わりである」と説明しています。

その後、ヴィーガン協会は、ヴィーガニズムを「動物への搾取や残酷な扱いを、可能で実行できる限り取り除こうとする考え方と生き方」と定義しました。この「できる限り」という言葉が、今もヴィーガンの大事な前提になっています。

1994年:ワールド・ヴィーガン・デー

ヴィーガン協会の50周年を記念して、1994年に「ワールド・ヴィーガン・デー(11月1日)」が始まりました。11月は「ワールド・ヴィーガン・マンス」として、世界各地でイベントが開かれます。また、1月の1か月間ヴィーガン生活に挑戦する「ヴィーガニュアリー(Veganuary)」というキャンペーンも、イギリスから世界に広がりました。

日本:精進料理という「元祖」

日本には、もともと植物性の食文化が根づいています。675年には、仏教を信仰した天武天皇が、牛・馬・犬・猿・鶏を食べることを禁じる詔(みことのり)を出したとされます。その後も、仏教の考え方とともに肉食を避ける習慣は長く続き、お寺では野菜や豆、穀物だけで作る「精進料理」が発達しました。

明治時代の1872年に肉食が解禁されると、日本人の食卓には少しずつ肉が増えていきます。そして21世紀、海外から「ヴィーガン」という新しい言葉が入ってきたとき、日本の豆腐、納豆、湯葉、高野豆腐、麩といった伝統食材が、あらためて注目されることになりました。

2010〜2020年代:日本でも「対応」が広がる

  • 2017年:内閣府の職員食堂が、主に金曜日にベジタリアン・ヴィーガン向けの料理の提供を始める
  • 2023年:国が「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」などのJAS(日本農林規格)を整備。納豆メーカーや内閣府の食堂が初の認証を取得
  • 2024年:観光庁が「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」を発行

大豆ミートや植物性ミルク(豆乳、オーツミルクなど)がスーパーやコンビニに並ぶようになり、「ヴィーガンではないけれど、ちょっと取り入れる」人も増えました。

数字で見るヴィーガン

  • 日本のベジタリアン・ヴィーガン:約5.1%(ベジタリアン3.8%、ヴィーガン2.2%。2021年12月、Vegewel調査)
  • 意識して動物性食品を減らしている人:約19.0%(同調査)
  • 別の調査(2025年):ヴィーガン2.7%、ベジタリアン2.6%(ヴィーガンスタート調べ。調査方法が異なるため単純比較はできない)
  • 世界のベジタリアン人口:約5.3億人(2023年、観光庁ガイドより)
  • 日本を訪れるベジタリアン等の旅行者:約128万人(2023年推計)。訪日客全体の約5.1%
  • ベジタリアンの割合が高い国・地域:インド約20%、台湾約12%

意外かもしれませんが、日本でも約20人に1人。クラスに1〜2人はいる計算です。さらに「減らしている人」まで含めると、5人に1人くらいが、何らかの形で植物中心の食事に関わっていることになります。

ヴィーガンの価値観

  • 「できる限り」でいい:ヴィーガン協会の定義にある「可能で実行できる限り」。完璧であることより、できる範囲で続けることを大切にする考え方
  • 選ぶことが意思表示:何を買うか、何を食べるかが、そのまま「どんな社会を応援したいか」の表明になる
  • 動物を「使うもの」として見ない:食べ物だけでなく、服、化粧品、娯楽まで、動物を利用しない選択を探す
  • 地球全体を考える:自分の食事が、遠くの森や気候にもつながっていると考える

「できる限り」という考え方は、とても大事なポイントです。外食先で完全に確認できないこともあるし、うっかり口にしてしまうこともある。そんなときも、自分を責めすぎず、また続ける。ヴィーガンの多くは、そうした「続けやすさ」を大切にしています。

界隈のお作法・習慣

  • 原材料表示をチェックする:肉や魚だけでなく、ゼラチン、乳成分、卵白、「〇〇エキス」など、見落としやすい動物性の原材料を確認する
  • だしを確認する:日本の外食は、かつおだしや煮干しだしが多い。和食でも「だしは昆布としいたけ?」と聞く
  • はちみつも避ける:はちみつはミツバチが冬を越すための食料であり、養蜂も動物の利用にあたる、という考えから
  • 服や化粧品も選ぶ:レザーやウールの代わりにヴィーガンレザーや植物素材を選ぶ。動物実験をしていない化粧品(クルエルティフリー)を選ぶ
  • 認証マークを探す:ヴィーガン認証のマークがついた商品は、確認の手間が省ける
  • お店はアプリや口コミで探す:ヴィーガン対応の飲食店を検索できるアプリやサイトを活用する
  • 持ち寄りで楽しむ:ホームパーティーでは、自分で作った料理を持っていく人も

ちなみに観光庁のガイドによると、専用メニューがなくても、ベジタリアン・ヴィーガンの約8割は「来店する可能性がある」と答えています。「全部ヴィーガンのお店じゃないと行かない」というわけではなく、相談に応じてくれるお店なら選択肢に入る、という人が多いのです。

日本ならではの「難しさ」と「楽しさ」

日本は、ヴィーガンにとって「宝の山」でもあり、「落とし穴だらけ」でもある国です。

宝の山:豆と大豆の国

豆腐、納豆、油揚げ、湯葉、高野豆腐、麩、こんにゃく、海藻、きのこ。日本の伝統食材には、もともと動物性を使わないものがたくさんあります。精進料理の技術を生かした料理は、ヴィーガンでない人にも人気です。

高野豆腐の唐揚げ風に、豆乳グラタン。ヴィーガンではない人が「めっちゃ美味しかった」と紹介するように、植物性の料理は、ひとつのジャンルとして楽しまれています。

落とし穴:見えない「だし」

一方で、日本の料理には「見えない動物性」がたくさん隠れています。お味噌汁のかつおだし、ドレッシングの魚介エキス、スナック菓子の味つけに使われた乳成分。野菜だけのように見えるメニューでも、だしに動物性が使われていることがよくあります。訪日客のための観光庁ガイドでも、使っている食材をメニューに明記することが勧められています。

それでも、工夫しだいで食卓はちゃんと豊かになります。

よく出る言葉(用語集)

スタイルの呼び名

  • ヴィーガン(ビーガン):動物由来のものをできる限り避ける人・生き方。「ビーガン」と書かれることも
  • ヴィーガニズム:ヴィーガンの考え方そのもの
  • エシカル・ヴィーガン:動物の権利を理由に、暮らし全体でヴィーガンを実践する人
  • ダイエタリー・ヴィーガン:食事だけをヴィーガンにしている人
  • プラントベース:植物性の食品を中心にした食事。健康や環境の文脈で使われることが多い
  • フレキシタリアン:ふだんは植物中心で、ときどき肉や魚も食べる人
  • ノンヴィーガン:ヴィーガンではない人
  • ローヴィーガン:加熱しない(または低温で調理した)植物性の食事をとる人

食べ物・商品

  • 代替肉(大豆ミート、ソイミート):大豆などから作った、肉のような食感の食品
  • 植物性ミルク:豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクなど
  • ヴィーガンレザー:動物の皮を使わない、植物素材や合成素材の革風素材
  • クルエルティフリー:動物実験をしていない化粧品や日用品
  • 五葷(ごくん):ニンニク、ニラ、ネギ類など、香りの強い野菜。オリエンタル・ヴィーガンは避ける
  • コンタミ(コンタミネーション):調理器具や油などを通じて、動物性のものが混ざること

イベント・しくみ

  • ワールド・ヴィーガン・デー:11月1日。1994年に始まった
  • ヴィーガニュアリー:1月の1か月間、ヴィーガン生活に挑戦するキャンペーン
  • ヴィーガン認証:動物性の原材料を使っていないことを第三者が確認したマーク
  • ベジ・ヴィーガンJAS:国のJAS(日本農林規格)にもとづく、ベジタリアン・ヴィーガン向けの認証

なぜ今、ヴィーガンの話題や商品が増えているのか

① 環境への関心が高まった

気候変動への関心が高まるなかで、「食べ物が地球に与える影響」を考える人が増えました。肉を少し減らすだけでも意味がある、という考え方が、フレキシタリアンという「ゆるい参加」の形を生み出しました。

② 健康志向と「選べる」商品の登場

大豆ミートや植物性ミルクが、身近なスーパーやコンビニで手に入るようになりました。ヴィーガンのための特別な食品というより、「ちょっと気になるから試してみる」商品として、一般の人にも広がっています。

③ 訪日客の増加

日本を訪れるベジタリアン等の旅行者は、年間約128万人(2023年推計)。飲食店や食品メーカーが対応を進め、国も観光庁ガイドやJAS規格を整えました。訪日客向けに広がった対応が、国内のヴィーガンにとっての選択肢も増やしています。

④ SNSでレシピや店が共有される

「ヴィーガン縛りでもこんなに作れた」というレシピや、おいしいお店の情報が、SNSで次々に共有されるようになりました。「我慢の食事」ではなく「工夫して楽しむ食事」というイメージが広がりつつあります。

つまり

ヴィーガンは今、「ごく一部の人の、厳しいルール」から「だれでも少し取り入れられる選択肢」へと、裾野を広げているところです。

ヴィーガン文化の魅力と面白さ

  • 新しい味に出会える:大豆ミート、植物性チーズ、ナッツのクリーム。「これで本当に動物性ゼロ?」という驚きがある
  • 日本の伝統食を再発見できる:精進料理、豆腐、湯葉、高野豆腐。昔からある食材の、新しい使い方が見つかる
  • 料理の工夫がクセになる:卵の代わりに何を使う?バターの代わりは?パズルのような楽しさがある
  • 世界とつながる:ヴィーガンは世界共通の言葉。旅先でも、同じ考えの人やお店とつながりやすい
  • 自分の選択に意味を感じられる:毎日の買い物が、小さな「意思表示」になる

とくに料理の工夫は、ヴィーガンでない人にとっても面白いところです。動物性を使わないという「縛り」があるからこそ、新しいレシピや食材の組み合わせが生まれています。

外から見ると

ヴィーガンは、SNSでは議論になりやすい話題のひとつでもあります。食は人それぞれの価値観や文化に深く関わるため、意見がぶつかることもあります。ただ、多くのヴィーガンは、自分の選択として静かに実践している人たちです。

知っておきたいことも整理しておきます。

  • 「ヴィーガン=健康」とは限らない:植物性でも、加工度の高い食品や揚げ物ばかりでは栄養がかたよる
  • 栄養には気を配る:動物性食品を完全にやめる場合、ビタミンB12などは植物性食品からとりにくいため、イギリスの医療機関などはサプリメントの利用を案内している。体調が気になるときは医師や管理栄養士に相談を
  • アレルギーとは別のもの:ヴィーガン対応の料理でも、大豆や小麦、ナッツなどが使われることは多い

一緒に食事をするときは、「何が食べられないの?」と気軽に聞くのがいちばん。多くの人は、聞かれることをむしろ歓迎しています。

まとめ

  • ヴィーガンは、動物由来のものを「できる限り」避けて暮らす人たちと、その文化
  • 1944年にイギリスで生まれた言葉。「ベジタリアンの始まりであり、終わり」
  • 日本では約20人に1人がベジタリアン・ヴィーガン。減らしている人まで含めると約5人に1人
  • 日本の精進料理や大豆食品は「元祖プラントベース」。一方で、見えない「だし」が落とし穴
  • いまは「だれでも少し取り入れられる選択肢」として、裾野が広がっている

次にスーパーで大豆ミートや豆乳を見かけたら、その向こうにある80年分の歴史を、ちょっとだけ思い出してみてください。いつもの買い物が、少しだけ違って見えるはずです。

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出典

(この記事は2026年10月時点の情報です。)

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