インディーゲームが「AIで真似される」問題とは?体験版中止、翌日にそっくり作品…作る人はどう守る?

インディーゲームが「AIで真似される」問題 バズニュース

いま、個人や小さなチームが作ったゲームが、発表してすぐAIで「そっくりな作品」にされる、という問題が広がっています。2026年10月には、日本のインディーゲームが体験版の一般公開を取りやめ、海外ではSNSでバズったゲームのそっくり作品が翌日に出回りました。

このサイトでは、Xでバズった個人制作のゲームをたくさん紹介してきました。だからこそ気になる、「じゃあ、作る人はどうやって守ればいいの?」を、報道と公式情報、専門家の解説をもとに整理します。この記事は2026年10月18日時点の情報です。法律の話は一般的な説明で、個別のケースは弁護士などの専門家に相談してください。

ざっくり言うと

  • 10月16日、『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』(アライアンス・アーツ)が、体験版の一般公開を取りやめ、参加者を限った体験会に変更。理由のひとつが「AIなどで短期間に模倣・再現した作品が、発売前に出る可能性」。
  • 同じころ海外では、Xで450万回見られた「壁をパンチして脱出するゲーム」の映像が出た翌日、そっくりなゲームがRobloxに登場。作った人はAIを使ったと話している。
  • 日本の法律では、ゲームのルールやアイデアは著作権で守られにくい。守られやすいのは絵・音・プログラム・文章などの「表現」。
  • 作る側の対策は「見せ方を工夫する」「自分が先に作った証拠を残す」「表現の丸写しには削除を申し立てる」「まねされにくい強みを作る」の4つが軸。

何が起きている?

日本:体験版の一般公開をやめた『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』

ヤンデレ悪魔と命がけのお酒ロシアンルーレットをする『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』は、12月8日にSteamで発売予定(666円)。体験版を10月19日に一般公開する予定でしたが、10月16日に取りやめを発表しました(電ファミニコゲーマーほか)。

開発元の説明は2点。プレイ動画の投稿・配信のルールを今の体制では管理しきれないこと。そして、体験版をもとにAIなどで短期間に模倣・再現した作品が、発売前に公開される可能性を心配したこと。かわりに、ルールに同意した人だけが参加できるオンライン体験会を、公式Discordで募集しています。

海外:バズった翌日にRobloxに「そっくり作品」

Game*Sparkによると、Pandorio Gamesが10月14日にXで公開した「壁をパンチして脱出する」ゲーム『Escape the Walls』の映像は、16日時点で約450万回再生。ところが翌15日には、よく似た「Escape the Wall」がRobloxに公開されました。そっくり作品を作った人のひとりは「AIが全部やってくれた」という趣旨の発言をし、批判には「盗むだなんて大げさ」と反論しています。

「先にクローンを出すぞ」という脅しまで

10月5日のGame*Sparkの記事では、海外のインディー開発者が「24時間以内に200ドル分のSteamアイテムを送らなければ、AIで作ったクローンをSteamで出す」と脅されたことが報じられました(開発元は支払わないと表明)。日本でも、デッキ構築ゲーム『プロジェクト・ソラリス』の開発者が、週2回の進捗投稿を控えると発表しています。

そもそも、ゲームはどこまで法律で守られる?

ここがいちばん大事なところです。日本の著作権法が守るのは「表現」で、「アイデア」は守りません。ゲームでいうと、こう分かれます。

守られやすい(表現)守られにくい(アイデア)
キャラクターや背景の絵、UIのデザイン「壁を殴って脱出する」などのルールやシステム
音楽・効果音「○○するだけ」というゲームの仕組み
プログラム(ソースコード)操作方法、ジャンル、雰囲気
セリフ・テキスト・シナリオありふれた画面の見せ方

有名なのが、釣りゲームをめぐる裁判です。1審は著作権侵害を認めましたが、知的財産高等裁判所(2012年8月8日判決)はこれを取り消しました。「魚が的に来たらボタンを押す」というルールはアイデアで、画面の見せ方もありふれた表現だ、という判断です(弁護士の解説記事による)。つまり、仕組みだけをまねた作品を著作権で止めるのは、かなりむずかしいのが現状です。

一方で、2024年4月施行の不正競争防止法の改正で、他人の商品の「形態」をまねした商品を売る行為の規制が、ゲーム内アイテムなどデジタルの商品にも及ぶことになりました。ただし、国内で最初に売り出してから3年以内などの条件があり、ゲーム全体のまね(クローン)にどこまで使えるかはケースしだいです。

作る人はどう守る?

報道されている開発者の対応や、開発者たちの議論から見えてくる対策を、4つに分けて整理します。どれも「これをすれば完全に防げる」ものではなく、組み合わせて使うものです。

1. 見せ方を工夫する(全部を一度に見せない)

  • 体験版は限られた人に。『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』のように、参加条件と動画投稿のルールに同意した人だけが遊べる体験会にする。
  • 進捗の出し方を見直す。『プロジェクト・ソラリス』の開発者は、まねされやすくならないと確信できるまで、進捗投稿を控えると決めた。
  • ただし、宣伝との板ばさみ。「宣伝すればまねされ、宣伝しなければ売れない」というジレンマは、多くの開発者が指摘しています。後ろ盾のない個人ほど、ここが苦しいところです。

2. 「自分が先に作った」証拠を残す

仕組みそのものは守られにくくても、絵・音・プログラムなどの表現を丸ごと使われた場合は、権利を主張できる可能性があります。そのとき役に立つのが、いつ、何を作ったかの記録です。日付の入った開発ログ、制作途中のデータ、公開した映像の投稿日時などを、きちんと残しておくと安心です。

3. 丸写しには、プラットフォームに削除を申し立てる

絵や音、コードなど「表現」をそのまま使われたら、公開先のプラットフォームに著作権侵害の通知を出せます。

  • Roblox:公式の「DMCAガイドライン」で、著作権の通知の出し方(メールなど)と、必要な情報(元の作品の説明、侵害している場所のURLなど)が案内されています。Robloxのガイドライン
  • Steam:著作権侵害の通知フォームがあります。Steamの著作権侵害通知
  • 脅しには応じない。「お金を払わないとクローンを出す」と言われた開発者は、支払わないと表明しています。やりとりの記録を残し、プラットフォームに相談しましょう。

ただし、通知でうまくいきやすいのは「表現のコピー」の場合。ルールだけ似ている作品には、通知が通りにくいことも覚えておきましょう。

4. まねされにくい強みを育てる

開発者たちの議論では、「ゲームバランスはAIでは再現しにくい」という指摘もあります。細かい手ざわり、世界観、キャラクターや絵の個性、そして作者本人の発信やファンとのつながり。これらは、仕組みだけまねたクローンにはなかなか持てないものです。

遊ぶ側にできること

  • 本家で遊ぶ。気になったゲームは、作者が告知しているURLやストアページから。
  • 紹介するときは作者のリンクを。動画や投稿で紹介するときも、本家の情報をそえる。
  • 体験会のルールを守る。動画投稿の制限などは、作る人が作品を守るためのもの。

このサイトの今話題のインディーズゲームまとめでも、紹介するゲームは作者の告知ポストと本家のURLを必ずのせています。

分かっていないこと

  • AIで作られたクローンが、どのくらいの数出回っているのか(まとまったデータはまだ見当たりません)。
  • SteamやRobloxなどのプラットフォームが、AIクローン対策として新しいルールを作るかどうか。
  • 日本で、ゲームのクローンに不正競争防止法の新しい規定が使われた例。

まとめ

  • 2026年10月、インディーゲームが発表直後にAIでまねされる問題が相次いで報じられ、体験版の一般公開をやめる開発者も出た。
  • ゲームのルールやアイデアは著作権で守られにくく、守られやすいのは絵・音・プログラム・文章などの表現。
  • 作る人の対策は、見せ方の工夫、制作記録を残す、丸写しへの削除申し立て、まねされにくい強み作りの組み合わせ。

次に読む:個人制作ゲームのいまを知るなら、Xでバズった無料ゲームを集めた「今話題のインディーズゲームまとめ」もどうぞ。

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